ひょっとして…から始まる恋は
彼と食事に行った先は、和風な雰囲気の漂うレストラン。創作の懐石料理を出すお店らしくて、最近話題だと聞かされた。


窓際のテーブル席に案内された私達は、彼の提案で日本酒を頼んだ。
これまでは飲んでもワインが主だった人が珍しいな…と、つい聞いてしまった。


「木下先生は日本酒なんて飲めるんですか?」


似合わない…と思う気持ちを隠した。
彼は飲めるよ、と微笑み、此処のは格別なんだ…と説明する。


「へぇーそうなんだ」


私は特に大酒を飲むつもりでもないから、格別と聞かされても一杯だけにしておこうと決めた。


冷酒は手造りのガラスのお猪口に入って運ばれてきた。
乾杯の為に持ち上げると仄かな甘い香りが鼻腔の奥に漂う。



「一週間お疲れ様」


そう言う彼にチョン…とお猪口の縁を合わせて口にする。その瞬間、思ってる以上にフルーティーな味に驚き、透明な中身を見て、「美味しい!」と叫んだ。


「だろ。この間、橘先生に連れてきてもらった時に飲んでそう思ったんだ」


医師会の帰りに二人で食事をしたと話す彼に目を向け、そうなんですか…と納得。

< 176 / 190 >

この作品をシェア

pagetop