ひょっとして…から始まる恋は
「お誕生日おめでとうございます」


マスターの声にえっ…と声を発したまま沈黙し、隣に座ってる男性が小さな箱をポケットの中から取り出した。


「おめでとう波南。ついでに俺と結婚してくれないか」


箱の中から出されたのはビロードのジェリーケース。
遠目に光る宝石を見た時、キュン…と胸が押し狭まった。


目を点にしながらも涙ぐむ彼女が彼にハッキリと「はい」と言った。
その瞬間を自分も期待してたことがあったな…と思い、堪えきれずに立ち上がった。

そのまま慌てて外へと逃げ出すと、当然追って来た彼が、どうしたんだ!?と呼び止める。


振り向くと彼は困惑気味に眉根を寄せてる。
この人には分からない私の過去を語るつもりもなかったのに__


「私もさっきの女性のように彼からのプロポーズを待ってる時期がありました。

本気で彼のことが大好きで、どんなことがあっても乗り越えていけると信じてた。

 
だけど、彼が浮気を繰り返して、その自信が少しずつ崩れていったの。

心の狭い女だと思われたくなくて、一度や二度なら許そうとした。だけど、三度目の時は我慢が出来なかった…」


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