ひょっとして…から始まる恋は
「勝手に片付けるなよ」


後ろからドスの効いた声が聞こえ、私は驚きで足を止める。
ビクッとしながら振り向くと、木下先生は仏頂面で私のことを睨み付けてた。


（マズい、怒らせた…？）


やはりストレートに言ってはいけなかったか。


彼は仏頂面のままスタスタと歩み寄り、もう一歩くらい足を前に伸ばせば、容易に腕を掴まえられるくらいの距離を空ける。
　
顔は少しだけ赤くて、それをさっき飲んだ日本酒のせいにしたかったけど、やはり自分の言った言葉で彼が怒ったんだと思うと戸惑う。


でも、今更のように謝っても遅い。それに、自分も彼に謝りたいとは思ってない。

私は自分の気持ちを正直に彼に言ったまでで、それを理解をして貰えないのは、彼が年上だからだと思ってたい。



木下先生は唇を震わせたままで私のことを見つめていた。
彼は絶対に怒りを堪えてるんだと思い、別に怒られても平気だ…と考えた。


「いいんですよ、殴っても」


先生のプライドを傷付けたのかもしれないし、年上の人に嫌悪を感じると言ったのもマズかったかもしれない。

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