ひょっとして…から始まる恋は
それでも彼を許した。
絶対に次はしないと言う彼を心の何処かで信じたかった。


「私は嘘を吐かれるのはもう嫌なの。相手を疑うのも嫌だし、浮気を知って恨むのももう懲り懲り。

それなら最初から誰とも付き合わずにいて、一人で生きた方がマシ。少しくらい虚しくてもそんな女性は幾らでもいるから」


お一人様でも平気だと口にする。
木下先生は間を詰めたまま、苦虫を噛み潰したような表情でいた。


「もう離して下さい。でないと大声を出しますよ」


パワハラですよ、と彼を脅迫してもいい。
それくらい自分で自分を追い込んでた。




「……馬鹿だな」


木下先生はそう呟くとぐいっと自分の方に私を引き寄せ、あ…と声を出す間もなく自分の唇を私のに押し付けてくる。

こっちは驚き、離れようとしてもがくが、彼はそんな私の背中に手を回し、握ってる手をぎゅっと包み込む様に握り返してきた。


唇は強く押し当てられた後、ふっと軽くなって優しく触れる。

久し振りの感触に戸惑う私の反応を確かめるように何度も角度を変えては触れてきて、身体の力は次第に抜けていってしまう___


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