ひょっとして…から始まる恋は
傷付けられた心が痛くて。
信じたくてもまた裏切られるかもと思うと怖くて。


「不安なんです……先生がいい人だと思うから……それを疑いたくないだけなんです……」


仕事として割り切ってるつもりでも、話すと居心地が良くて安心できた。
表面的には年下の子に燥いで甘える私だけど、心底から頼りにできるのは、やはり年上の木下先生くらいで__。


「失いたくないんです…だから、今のままがいいんです……」


仕事上の関係なら、辞めない限り一緒の時間が作れる。

食事を共にしてお酒も美味しく飲める。

共通の話題で盛り上がって、声を出して笑える。


そこに男女としての繋がりがないにしても、代わりに『信頼』という言葉が似合う間柄でいられるならいい。


「そんなのじゃ嫌だと俺が言ったら?」


「私には、そんな意地悪を言わないで下さい…としか……言いようがありません……」


頑なだと思われても仕方ない。
それくらい自分の心はまだ深く傷付いてるんだ。



「君の中に踏み込めさせてもくれないのか?」


「とにかく今夜はもう……止めて欲しい…としか、言えません……」


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