ひょっとして…から始まる恋は
伸ばした腕の分だけ距離を空け、お願いします…と頭を下げた。
目線を上げると彼は渋い表情でいて、私はそんな彼を見てると胸が苦しくもなるけど__



「……ごめんなさい……先生……」


一線を引くように役職名で呼んだ。
彼は渋い表情を崩さないまま私を見つめ、それでもようやく諦めがついたように息を吐く。


「……分かった。今夜はもう無理強いはしない」


それを聞くと安心して、ほっ…と肩の力が抜ける。
その肩に手を乗せた彼が私をもう一度抱き寄せ、耳元に優しく囁きかけてきた。


「俺は諦めないから。いつか君の心に踏み込んで、嫌と言うほど愛と情熱を注ぎ込んでやるよ」


覚悟しとけ…と笑ってる。
もう十分何かを得た様な気分がしてたけど、そこは否定をしないで頷いた。



「期待しておきます…」


微笑むと額に被った前髪を掻き上げる。
露わになったおでこに唇を寄せ、彼は嬉しそうに笑った。



「可愛いよ。美穂」


その言葉が私にとってどれだけの賛辞になったか。

彼は何も知らないままに歩き出して、私はそんな彼の肩に初めて安心して凭れた……。




続編END

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