ひょっとして…から始まる恋は
彼との時間
それから暫くの間、藤田君とは会わなかった。

元々彼は外来で働いているのだから当然で、用事のない限り、医局の教授達の元へはやって来ない。


その間、松下さんは彼の顔が見れないからつまらない…と漏らし、それを聞いた三波さんから、当たり前でしょう…と窘められていた。


私はそんな松下さんを見ていると、ある意味素直で羨ましいなと思う。
自分には口にできない言葉もスルリ…と吐けて羨ましい。


高校の頃もそうだった。
友達が彼にタメ口で話すのを聞いたり、告白する人達を見ると凄いなぁ…と感心ばかりしていた。


私は彼を好きでも遠くからしか見れなかった。

優しそうに微笑んでいる姿を見るだけで、胸の奥がキュッと締まり、ドキドキと高鳴らせてばかりいた。


そんな彼との時間は切ないけれど楽しかった。
会話もほぼないに等しい日々だったけれど、それでも大切な思い出の時間。


だから、今この医局内で彼に会えたことが不思議で、それだけでとてもラッキーだと思っている。


秘書をしないかと言ってくれた叔父に感謝をしている。
前職を辞めて、此処へ来て良かったと感じている__。


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