ひょっとして…から始まる恋は
藤田君と再会したのは、花見会から一週間以上過ぎた頃だ。医局棟の近くにある職員食堂で、偶然にも利用が重なった。


「…ひ、久し振りね」


いきなり後ろから肩を叩かれ驚いた。
私の声に振り向いた松下さんは喜んでチャオ!と声を跳ね上げ、三波さんはお疲れ様ですと落ち着いた声をかけている。


「どうも、お疲れ様です」


医師なのに偉そうにもしない彼は好感度が高い。
医局の秘書をしている私がそう思うのだから、きっと周りの女性達も同じだろうと思う。


「藤田君も今から食事?」


松下さんはちゃっかり彼の隣に立ち、満面の笑みを浮かべている。
彼女に対し若干引くような姿勢でいる彼は、ええまあ…と弱りきった顔つきで返事をした。


「何を食べるの?」


まるで保護者のように訊ねる彼女に、日替わりにしようかな…と呟く彼。
奢る奢ると燥ぐ彼女に遠慮する藤田君を見つめながら、ハッキリ断れないのかな…と考えていた。



「美穂、早くしないと迷惑よ」


三波さんがピシッと彼女を叱りつけた。

彼もようやく食券があるので大丈夫です、と断り、彼女は詰まらなそうな表情で自分の分だけを買って避けた。

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