ひょっとして…から始まる恋は
だけど、買った後は直ぐに気持ちを立て直し、藤田君に一緒に食べようと誘っている。

本当に何処までも積極的で羨ましいくらい。
それに比べると自分はイラッとするほど消極的な人間だ。



「松下さんには負けるなぁ」


藤田君も負けた…という感じで付いて来て、四人で丸テーブルを囲んだ。
彼の両隣の席は先輩達に譲り、私は正面に腰を下ろした。


「…あれ?保科さんはそれだけ?」


おにぎりの乗った皿と味噌汁のお碗を見て驚かれる。


「うん、基本昼は少なめなの」


お金が勿体なくて…とは言えず、フフ、と笑って誤魔化した。


「もっとしっかり食べれば?と思うんだけどね」


三波さんは少し呆れ気味。
入った頃は心配もされていたけれど、この頃はもう慣れてしまったようだ。


「ふぅん、よく持つね」


感心するように声を出した彼が、自分の箸を握った。


「…でも、やっぱりそれだと栄養が偏るよ。ほら、これも食べて」


そう言うと自分の定食のコロッケを一つくれる。
日替わりのコロッケは、蟹クリームだと書いてあったから、いい、いい、と手を振って断った。


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