ひょっとして…から始まる恋は
「同じ高校のクラスメートでしたけど、そんなに親しく話もしませんでしたから」


ただ彼のことを眺めるだけの三年間だったとは言えず、にこっと微笑むだけにしておいた。


「そうなの」


「それで?彼のお兄さんがどうしたの?」


首を突っ込んでくる松下さんに三波さんは目を向けた。


「なんでも市民病院ではかなり有名な外科医だったみたいで、外科部長からの信頼も厚いんだと話してたわ。

だから、自分はそんなお兄さんに負けない医師になるんだと言ってたの。学生の中では優秀な方だったのに、それでも負けたくないと思ってたみたい」


「へぇー、意外ね。あんな穏やかそうな彼がそこまで言うなんて」


松下さんもこの話は初耳らしく、驚きを隠さずに目を見開いている。


「それで外来で働いてるんですか?」


エリートの医局医にはならず?と訊ねたら。


「うーん、どうだろ。そうなのかもね」


三波さんは自分でも詳しいことは知らないと言っていた。少し腑に落ちないものを感じながら昼食休憩は終わった。


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