ひょっとして…から始まる恋は
顎を下げて頷きながら中に入るように示し、私は叔父の視線に促されるように足を前に進めた。


「皆に紹介しておこう。新しい教授秘書をする私の姪の保科柚季だ」


ドアレバーから手を離した私の肩に手を置いた叔父が、そう言って前に押し出す。
部屋の中には声の聞こえた三人以外にも人がいて、思わずひゅっと息を吸い込んだ。



「…よ、よろしくお願いします」


用意していた挨拶など、何処かに吹きと飛んでしまう。
マズい、しまったー、と頭の隅っこで考えた。


「初めまして。よろしく」


最初に近寄ってきたのは四十代前半くらいの男性。
准教の橘です、と名乗った彼の後から次々と皆が自己紹介してくる。


「橘先生の秘書をしています、三波と申します」

「よろしく。俺は古賀です。こっちは同じ准教の木下」

「初めまして」


握手をしながら名刺を頂き、名前と顔をインプット。
だけど、一度には覚えきれそうにもなく、増えていく名刺の数にオタオタした。



「…しかし、教授の姪御さんにこんな可愛い子がいたとは驚きですよ。歳、幾つですか?」


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