ひょっとして…から始まる恋は
「藤田君が必要なんじゃない?」
読んでいたからそうだろうと思ったが。
「俺はただの時間潰しで読んでただけだからいいんだ。教授の文献に要るんだろ。早く持って行ってあげて」
ニコッと笑いながら差し出してくる。
さっきのコロッケもそうだけど、今も自分よりも私の方を優先してくれる。
「藤田君はどうして…」
そんなに良くしてくれるの?
私が同じ高校の同級生だから?
「ん?」
彼が小首を傾げる。
思いきって、どうしてそんなに親切なの?と問いたくなったが。
「いいの。何でもない」
やっぱり声に出せる訳もなく、ありがとう…と言って本を受け取った。
その際に指先が重なり、トクッと心臓が跳ね上がる。
「それじゃ」
彼は背中を向けて去って行く。
それを思わず追いかけて、ぎゅっと抱き付きたい衝動に駆られた。
(バカ、柚季。何を思ってるの!)
彼を見ないように踵を返し、その場に佇んだまま歩き去る足音に耳をすませる。
もう二度と会えなくなると思い忘れようとした頃の気持ちが急にまた膨らんでいくような気がする。
読んでいたからそうだろうと思ったが。
「俺はただの時間潰しで読んでただけだからいいんだ。教授の文献に要るんだろ。早く持って行ってあげて」
ニコッと笑いながら差し出してくる。
さっきのコロッケもそうだけど、今も自分よりも私の方を優先してくれる。
「藤田君はどうして…」
そんなに良くしてくれるの?
私が同じ高校の同級生だから?
「ん?」
彼が小首を傾げる。
思いきって、どうしてそんなに親切なの?と問いたくなったが。
「いいの。何でもない」
やっぱり声に出せる訳もなく、ありがとう…と言って本を受け取った。
その際に指先が重なり、トクッと心臓が跳ね上がる。
「それじゃ」
彼は背中を向けて去って行く。
それを思わず追いかけて、ぎゅっと抱き付きたい衝動に駆られた。
(バカ、柚季。何を思ってるの!)
彼を見ないように踵を返し、その場に佇んだまま歩き去る足音に耳をすませる。
もう二度と会えなくなると思い忘れようとした頃の気持ちが急にまた膨らんでいくような気がする。