ひょっとして…から始まる恋は
普通のクラスメートとしてしか接してこなかった。
自分の親や兄弟のことなんて親しい友人くらいにしか教えてない。


「…あ、そうか。そう言われると俺も保科さんの家族については知らないか」


今更だけど聞いてもいい?と言う彼に、ドキッと胸を弾ませる。
それを話せば高校の頃よりも確実に距離が近づくと思え、いいんだろうか…と気遅れた。


「私には両親と弟が一人いて、家では猫を一匹飼ってます」


何だか恥ずかしくなって語尾が丁寧になってしまう。
藤田君は、へぇーそれで?と聞き返し、これ以上に何を喋ろうか…と焦った。


「猫の名前は『ゴロン』と言います。ゴロゴロと喉を鳴らしながら寝転ぶ姿から付けたの」


「ふうん。可愛いね」


笑い返す彼の声に胸が弾み、うん…と言いながらも目線を下げる。


「……藤田君の家族は?」


自分のだけではなく、彼のことも聞いてみたくなった。
彼は視線を雨の中に移して、自分には両親と兄貴と妹が一人ずついるだけ、と語った。


「自宅が外科で開業をしているんだ。以前は父親が院長をしてたけど、今は兄貴が継いでいる」


「お兄さんが!?」


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