ひょっとして…から始まる恋は
「うん、親父が医大の講師を始めたせいで病院にまで手が回らなくなったからさ」


たまには自分が医師をすることもあり、こう見えて結構忙しいんだ…と言っていた。


「大学病院で勤務するだけじゃやなくて、自宅の病院も手伝ってるの!?」


大変ね…と声をかけると、フ…と唇の端を上げる。


「大変だけど色々と勉強になるから有難いんだ。
俺はまだ医者になって年数も浅いし、兄貴に頼られると優越感にも浸れて嬉しいしね」


お兄さんに対してライバル心があるみたいで、それは昼間の三波さんの言葉からも感じていた。


「へぇー、凄い。感心」


頭が下がるくらいに勉強熱心だと思え、自分も秘書の仕事を頑張らなきゃ…と思った。



「雨がだいぶ小降りになってきたね」


言われて振り返ると雨粒は細くなり、地面を叩きつける様に降っていた雨の量も減ってきている。


「保科さんはこの後どうする?タクシーでも呼ぶ?」


「私はもう少し此処にいる。止みそうになかったらコンビニで傘でも買って帰るから平気。…藤田君は?」


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