ひょっとして…から始まる恋は
橘先生は微笑みながら叔父を見て、見られた叔父は、幾つになった?と私を見返す。


「二十六です」


言うのも何だか恥ずかしくなる。
照れる年頃でもないのにきゅっと肩を窄めてしまった。


「二十六か〜。若いなぁ」


まるで青春真っ只中にいる学生みたいに言われ、益々肩身が狭い。


「橘先生ってばオジサンみたいなこと言って」


秘書の三波さんという女性は茶化しながら場の雰囲気を和らげてくれる。

秘書という仕事は大変そうだな…と思え、自分にはやれるだろうか…と不安が増した。


「此処は医局棟だから大学での講義や自身の研究をする者しかいないけど、外来の医師もたまにひょっこり顔を出すからね」


来たらおいおい顔を覚えればいい…と話す叔父の言葉に、これ以上人が来るの!?と目を見開く。

両手に貰った名刺の人だけではないんだと知り、思わず背中に冷や汗をかいた。


慣れない初日の午前中は、秘書室に設けられた自分用のデスクを片付けた。
頂いた名刺はファイルに綴じ込み、いつでも確認出来るように机上の棚に並べた。


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