ひょっとして…から始まる恋は
保科さんじゃなくて柚季と呼んでもらって、優しく笑いかけて欲しい。

高校時代の同級生としてなんかじゃなく、彼の特別な存在になりたい___。



そう思うと胸の奥がぎゅっと痛くて、ぐっと拳を押し当てる。

それを望めば彼の彼女が悲しむ。
私には歓びが転がってきたとしても、誰かが悲しむようになるのなら嫌だ。



(だけど……苦しいよ……)


恋をするってこんなに苦しいことだった?
ふわふわして甘くて、酸っぱいものじゃなかったの?


「どうしたいの……私……」


答えは簡単。もう決まってる。
諦めればいいだけ、と頭の中では冷静なのに。


(嫌だよ。どうしても…)


心の中では全く別のことを思って、無性に涙が溢れてくる。
泣いても状況は変わらないんだと頭の中では分かっていても、それでも強く心が拒否をする。



(私……)


藤田君に言ってしまいたい。
高校時代も今も、ずっと貴方が好きです…と。



(だけど、それをしてしまえば…)


きっともう二度と普通に話せない。
職場は同じみたいなものなのに、彼と普通に話せなくなるのは辛い。


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