ひょっとして…から始まる恋は

その不自然さをおかしいと思いながらも突っ込みは入らず、それじゃ…と外へと向かう彼を見送ろうとした。


「…あ、保科さん」


いきなり名前を呼ばれてビクッと肩が上がる。
ドキンと胸を弾ませながらドアの前にいる彼に目を向け、震えそうな声で、何？と訊いた。


「ちょっといいかな？」


ドアの外を親指で指す彼に、ドギマギと胸が鳴りっぱなし。

さっき天音から聞いたばかりの話が頭の隅を掠めて、浮かれてはいけない…と気を引き締めた。


外へ出ようとする私達を松下さんがジロッと横目で睨む。

貴女に睨まれても疚しいことなんてないですよ…と思っても、彼の彼女に対しては何処となく居心地の悪い感情が芽生えてくる。

彼女のいない場所で彼と二人だけになることに、少なからずの罪悪感を感じた。



医局の外へ出ると、藤田君は振り返った。
白衣を着ている彼は今までのどの姿よりも眩しくて、私は胸を躍らせながらも平気な顔つきで向かい合う。



「何？どうしたの？」


何となく頬の赤い様子に違和感を覚えた。
照れくさがっているように見え、勘違い？と首を傾げる。