ひょっとして…から始まる恋は
「この間、石川に会った」


天音の旧姓を言った彼に、ああ、うん…と返事。


「聞いた?」


「うん、さっき」


彼女とデート中だったんでしょ…とは、とても私の口からは言い出せない。
藤田君はそうか…と微笑み、自分のことについては語らず、天音のことを話した。


「彼女、もうすぐ子供が生まれると言ってたよ」


「うん、もう臨月に入るからね」


「それも知ってるんだ」


「だって高校時代の親友だし」


知らないと変でしょ…と言うと、まあね…と笑みを浮かべる。


「近いうちに一緒に飲もうと言ってたよ」


「身重のくせに!?」


驚いて声を上げるけれど、天音なら言いそうなことだと考え、ふうん…と納得するように声を出した。


「その時にさ…」


藤田君はまだ話を続けたそうだった。
けれど、PHSに連絡に入り、そういう訳にもいかなくなったみたい。


「ごめん、呼び出されたから」


話はまたこの次に…と言って外来へ向かおうとする。

彼以外にも整形外科医はいるだろうに、どうして彼が呼び出されるの?


「大変ね。行ってらしゃい」


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