ひょっとして…から始まる恋は
ビールの後はハイボールとチューハイをごっちゃ混ぜに飲んだ彼女は、気分が悪いと言って開始から一時間半程度で帰る…と言い出した。


「明日から何を楽しみにして仕事すればいいのー!」


タクシーに乗せるまで管を巻き続けた松下さんを見送り、一人駅に向いて歩きだす。

松下さんみたいに酔って管を巻いてるうちに頭が切り替えられたらいいのに…と羨ましくなりながらも、人前で醜態を晒すのは出来ないな…とも考えていた。


自宅の最寄駅で降り、あの日藤田君と雨宿りしたコンビニを見つける。

あの時、彼が慌てて走って行った先は、きっと婚約者の家だったのだろう。高校の門前で別れた時も、きっと同じ家に向かって行ったに違いない。


私は彼女と同じ町に住んでいながら、藤田君がそこに足繁く通うのを見たことがなかった。

同じ町に住んでいるのに、どうして選ばれたのが彼女で、私じゃないのだろう。

彼女の何処が良かったんだろう。
私と何が違うのだろう。


自分と比べても仕様がないのに止まらない。
そのうち卒業した高校の前に着き、今はもう葉が生い茂った桜の枝を見上げた。


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