ひょっとして…から始まる恋は

同級生との再会

六月最後の日曜日、私は藤田君の披露宴に出席する為に予定の時刻よりも早く家を出た。

彼への恋心に決別をする為に訪れたい場所があり、そこに向いて足を速める。

それは自宅から十分程度離れた距離にある高校。この門の前で彼と出会い、キュンとする淡い初恋を知った。


毎朝、自転車を漕ぎながら向かってくる姿に胸を弾ませ、走り去って行く背中にしんみりするものを感じながら、言えもしない言葉を胸の中で呟いていた。

卒業式の日には、クラスメートの輪の中にも入れず、一人で遠巻きに彼を見ていた。

図書館でもグラウンドでも同じく、彼の微笑む姿ばかりを追っていた。


片思いを口に出そうとは思わなかった。
大人になれば忘れられる……。
そう高校時代の自分は思っていたから。


だけど、今は言えば良かったかな…と少し後悔もしている。
そしたらもっと早く、新しいものに出会えたかもしれないのに。


校門の前に立ち、三階建ての一番上の階を見遣る。
三年生の時に使っていた教室の辺りを見つめ、懐かしいな…と過去を振り返った。