ひょっとして…から始まる恋は
一メートルくらい手前まで来て立ち止まった彼をじっと見上げた。

日焼けした肌にダークブラウンの髪。
少し癖っ毛そうな髪の毛の先はウエーブして、目元は切れ長で瞳の色はソフトブラック。
鼻筋はスッと細くて、身長は藤田君よりも高そうだ。

その彼の大きめな唇が開き、久し振り…と挨拶をした。


「久し振りって…」


言われても思い出せない。
私の記憶の中にある男子は藤田君だけだから。


「やっぱりな。そういうリアクションになるだろうと思ってた」


ショックだな…と呟く彼は、自分のポケットから名刺を取り出して差し向ける。
そこには自分が前に勤めていた職場名があり、営業一課の部署名が印字されていた。


「四月から本社勤務になったんだ。それでやっと君に会えると思ってたのに仕事辞めてるんだもんな」


情けない様子で微笑まれ、それをどう捉えていいかも悩む。
名刺に記された名前は『久保田 暁』とあり、うーん…と頭の中で思考を繰り返した。


「まだ思い出さない?俺もこの高校の卒業生なのに」


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