ひょっとして…から始まる恋は

元クラスメートで藤田君とは友人みたいだけどどうする？彼と一緒に行くべきなの？


「あ、別に怖がらなくても大丈夫だよ。俺のことは行きながら教えてやるから」


そう言うと、高校の前に一台の黒いタクシーが通りすがり、彼は手を挙げてそれを止めた。

それから私を振り返って手招きし、開いたドアの中へどうぞ…と誘う。私は躊躇いながらも車に近寄り、中に乗り込むと彼も後部座席に身を収めた。


「プリンスホテルまで」


藤田君の披露宴と挙式が行われるホテル名を告げ、走りだすタクシー。

私は袖が擦れ合うような距離にいる彼を横目で見つめ、何を話しだすのだろうか…と様子を窺っていた。


「そんなに見られてると緊張するんだけど」


こっちを向いた彼の顔が微笑み、慌ててごめんなさい…と俯く。

久保田君は頭の上でクスッと笑い、さっきの名刺を私の手の中に乗せた。


「くぼた あかつき。俺の名前も覚えて」


あげる…と言って名刺を指差す。私は困惑したまま断りきれず、こくっと頷いて名刺を握った。


「へへっ、なんかちょっと感動」