ひょっとして…から始まる恋は
うっすらと頬を染める顔を見つめ、ぼうっとしたまま言葉を失う。
久保田君は私の顔を見ると照れくさそうに微笑み、知らなかっただろ?と声にした。


「………」


こくこくと黙ったままで首を縦に振ると、彼は唇の端を上げ……


「やっぱりな、保科さんは靖一筋だったもんな」


他にどんないい男がいたって見向きもしなかった、と言い出し、私は異様な汗をかく。

彼が私のことを好きでいたことも兎も角だけど、何より藤田君のことをストーカー的に見ていたことを知られていて恥ずかしくなった。



じっとりと額に汗を感じて押し黙った。
久保田君の顔も見れなくて、ぎゅっと両手を握り締める。



「俺ね」


久保田君はそんな私に構わず話を続けだす。
こっちは次に何を言い出されるのかとヒヤヒヤして、気が気でない様子で耳をそば立てた。


「君が靖に再会したのが本当は嫌で仕様がなかったんだ。…だって、あれだけ一途に思ってきた相手だろ。もしかしたらその思いが再燃して、ずっとまた思うかもしれないなと考えると堪らなくてさ」


靖はあの頃とは違うから…と呟き、私はそっと彼を見返す。

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