ひょっとして…から始まる恋は
その先でどうか知った顔がいませんように…と願ったが、それは勿論無理な相談というもので__。



「柚季ちゃん!」


大人びた女性の声に心臓が跳ね上がり、ビクッと背中を仰け反らせる。
目の前には叔父と三波さんと松下さんがいて、三人の眼差しはバッチリと私達二人に注がれていた。


「あ…お…お疲れ様です…」


狼狽えながら挨拶すると、叔父が眉をひそめて久保田君を見遣る。

医局に叔父がいるのは知っている彼でも、まさか目の前にいるのがそうだとは気づかない様子で。


「初めまして。保科さんの同級生で久保田と言います」


やっと肩から外された手にホッとして、ちらっと横に立つ人に視線を送る。
彼は私にもした様にポケットの中から名刺入れを取り出し、三人それぞれに配り始めた。


三波さんや松下さんはそれをじっと眺めているだけだったが、叔父はその名刺を見て、おや…と一言声を漏らし、前に私が勤めていた会社じゃないかと言ってきた。


「そうだろう?」


重ねて訊くものだからバツが悪く、こっちは肩を竦めながら、ええ…と返す。

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