ひょっとして…から始まる恋は
三波さん達はそれを聞いて、そうなの？と問い合わせてきて、私は躊躇いつつも、もう一度だけ頷いた。


「偶然にも彼がそこへ異動してきたらしくて」


食品関係の会社の営業一課で事務を担当していた私。
忙しい日々を思い起こしながら少し心苦しさを感じていた。


「へえー、偶然ね」


松下さんはちらりと久保田君に視線を投げかけ、再び目線を名刺へと落とす。

私はその意味深な言い方に眉をひそめつつも敢えて何も聞こなかったフリをして、目線を空に彷徨わせた。


「ねえ、柚季ちゃんの同級生なら藤田君ともそうってこと？」


三波さんは頂いた名刺をバッグの中にしまい、顔を上げて聞いてくる。それには久保田君がはい、と滑舌よく答えてくれて。


「俺達三人とも高三の時に同じクラスでした」


私がすっかり忘れていた真実までも述べている。
私はそんな彼の横顔を見つめながら、これ以上墓穴が掘られないことを願ったのだが。



「だけど、保科さんはそれを全く覚えてない様でした」


笑い飛ばしながらやっぱり墓穴を掘られてしまい、驚くと同時にシュンとする。

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