ひょっとして…から始まる恋は
それに合わせるように目線を向けると、いつもはあまり開け放されることのない教授室へのドアが開かれ、その奥に黒っぽいスーツを着た人の背中が見えた。


「えっ、ひょっとしてあれは…」


松下さんの表情が明るく変わる。
明らかに嬉しそうな顔に見え、一体何故?と首を傾げた。


「柚季ちゃんは彼とは今日が初対面よね。待ってて。呼んでくるから」


ニコニコ顔の松下さんは、鼻歌でも混じりそうな感じで教授室へと出向く。

おはようございまーす!と元気だけど間延びした挨拶をして直ぐに、ドア付近にいた黒っぽいスーツを着た彼に話しかけていた。



「美穂ってば、あの子がお気に入りなもんだから」


クスクスと笑う三波さん。
あの子と呼ばれるからには、あの黒っぽいスーツの彼は二人よりも年下なんだろうと思う。



「お待たせー、連れて来たよ」


腕に手を回して嬉しそうに戻って来る松下さん。
彼女に腕を取られた彼の方は少し困った様子で眉尻を下げている。



(あれ…?)


顔を見た瞬間、気のせいかなと思った。だけど、相手も私に気づいて瞬きをした。


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