ひょっとして…から始まる恋は
タネを明かすように少しずつ話す久保田君。
私は彼の声に集中しながらも目線だけはモニターから離さずに見ていた。


自分なりに、この日を忘れないようにしようと考えていた。
久保田君の話とは別に、きちんと初恋にサヨナラがしたかった。


「靖が大学に入った頃だったかな。あいつのお兄さんが彼女にモーションを掛けたことがあって。
でも、あの子は靖以外には興味もないからツレなくて、そのうち彼も諦めたって言うか。

丁度市民病院の外科で働いてたことも重なって、どんどん仕事が忙しくなっていて恋愛どころではなくなった…と言ってたな」


藤田君のお兄さんとも面識のありそうな彼は、そんな昔の話もしてくる。
モニターでは神父様の言葉がまだ続いていて、私はその声を聞き流しながら、ちらっと彼のことを確かめた。


「お兄さんの恋は上手くいかなかったけど、仕事は順調で確実に外科医としてのレベルを上げていった。

それで外科部長からも一目置かれる存在になれて、厚い信頼も得られるようになったんだ。

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