ひょっとして…から始まる恋は

「幼い頃から自分を追い続けてきた子が兄とはいえ、他の男に持っていかれそうになってるのが嫌でムキになってたんだよ」


それならもっと前から自分にきちんと繋ぎ止めておけば良かったんだと話す久保田君は、ふ…と小さな息を吐き出して……


「靖はお人好しで、誰にでも優しかったからな」


むくれながら頬を膨らませる。
私は雨の日に肩を抱かれてコンビニに向かって走った日のことを思い出して、きゅん…と胸が鳴っていた。


あの時の彼は、多分私が同級生だから気を遣った。
恋愛とかそんなもの関係なく、友人として風邪を引かさないようにしてくれた。


そこにはやはり何の思惑もなくて。
ただ医師として体が勝手に動いただけで__。



そう思うと気持ちがどんどん落胆していく。
分かっていたことだけれど、彼の真意を理解した。


藤田君は多分、幼い頃からずっと自分を慕い続ける女性のことを好きでいた。
高校時代はウザいとか言いつつも、心は彼女のことだけを思っていた。


その証拠に学生時代に特定の女子と付き合うことはなかった。

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