ひょっとして…から始まる恋は
松下さんが連れてきた黒っぽいスーツの彼は、真っ直ぐな黒い髪を短く切り揃えている。

サラサラそうな前髪の下には色白の顔が見え、その目元は黒く長い睫毛で縁取られ、そのせいなのか、くりっと丸く可愛く見える。

眉間の辺りから高く形のいい鼻梁、その下にある唇も血色が良くて色白な肌にはよく映えている。


ぱっと見、女子のように整った顔立ちの彼をプリンス系だな…と感心するように眺めたのだが……


(この人のこと、何処かで見たことがあるような……)


何処でだっけ…と考え始めて間もなく、あっ!と閃く顔が思い浮かんだ。



「ひょっとして…だけど、藤田君……?」


語尾を濁らせたのは少し自信がなかったから。


「そういう君は……保科さん?」


彼の方は少し確信があったみたい。
語尾を濁すこともなく問われ、わあ…と心が開いていくのが分かった。



「そう!当たり!」


やっぱり藤田君だ。
懐かしい…と思うと嬉しくなって、きゅっと両手を握り合わせた。


「どうして此処に…あっ、もしかして保科教授は君のお父さん?」


< 9 / 190 >

この作品をシェア

pagetop