ひょっとして…から始まる恋は
溢れ落ちる涙を掬わずにいると、隣から人差し指が近づいてくる。

そっと目尻を撫でるように掠める指先に視線を流し、その指の持ち主へと目線を向け直した。


「今日の式は、新婦が勝ち取った勝利みたいなもんだよね。諦めずに靖を想い続けて、親も周りをも説き伏せていったんだから」


藤田君にはお似合いの女性だと笑っている。

その顔が見えないくらいに次々と涙が溢れてしまい、必死で泣き声を堪え続けた。


「あーあ、泣かせちゃったか」


久保田君はそう言いながら肩を抱き寄せる。

彼の心音が聞こえる胸に縋らせてくれて、その温もりに包まれながら、はらはらと泣き続けてしまった。


「俺も呆れるくらいに人がいいな」


呟く声を聞きながら気持ちが温かくなっていく。

ただの同級生なのに優しくしてくれる久保田君に甘えて、少しずつ傷が癒されていく様な感覚を覚えた……。


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