花に美少年

「何言って、」

「とにかく、これ以上話すことないから」

「待ってよ!」

「居座ったりするなら警察呼ぶから」

「なんで警察!?」

「じゃーな」

「え、ちょっと!!」

煩いくらいの音を立てて扉が閉まる直前、部屋の奥から初めて聞く女の声がした。
だからもう、これ以上何もする気になれなくて、ただ涙が溢れた。
悔しくて、悲しくて。



「ごめーーん!今日ダーリン泊まりに来てるんだよね」

「あ、そっか。うん、大丈夫。ありがとー」

看護学校時代の友達や、昔のバイト仲間に電話をしてみたけれど、今日に限って見事に断られた。
そもそも、泊まりに来て良いと言われたからってこの荷物をどうしろって話だけど。

もちろん実家に帰れば早いのだけれど、親の反対を押し切ってあの男との同棲を始めた以上、こんな理由では帰れない。て言うか、こんな惨めな話、誰にも言えない。

「・・・本当についてない」

こんな時に限って、お財布は空っぽだ。
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