花に美少年
全てが遠い昔の出来事になったみたいに、私の中から薄れていく。
それが嫌だった。
自分がすごく薄情な人間みたいで嫌だった。
実は私も、あの最低の元カレと変わらないくらいに、浮ついた人間に思えて嫌だった。
自分の変化を受け入れることに、誰に対してなのかわからない後ろめたさがある。
結児君はきっと、いい人だ。
どれくらい遊び慣れているかは別にしても、人に対してすごく優しい人だと思う。
でないと、自分の生活スペースに出会ったばかりの他人を入れるのは、しかも数日間泊めるなんていうのは無理だと思う。それを嫌な顔一つせずに出来てしまう結児君は、例え下心があったとしても、優しい人だと思う。
だから、彼の言葉を信用していないわけではない。
真奈美に指摘された通り、嫌な気はしなかった。
むしろあんな風に言ってもらえる自分が、少しだけいいモノになった気がした。
最低な男に捨てられるくらいに価値のない自分が、価値のあるものになった気分だった。
でもそれが、ときめきや恋かと言われたら違うと思う。
もっと狡くて醜い感情だと思う。