花に美少年
兄妹揃って美形なだけでなく、話し上手なお兄さんは大手から引き抜きの誘いが来るほど優秀な営業マンだと真奈美は言っていた。その上、中学の同級生とずっと付き合っていて、今年の夏にめでたく結婚をするらしい。
なんて言うか、絵に描いたような理想の男性。
私もこういう人と出会いたかったな。
そんな無意味なことを考えながら、お兄さんの提案に頷いた私は、彼の車で一緒にラーメン屋に向かった。
「雨止みそうにないね」
二人合わせても1500円もしなかったラーメンは、奢ったと言っていいものか悩む。そんな私の隣で、雨を落とす夜の空を見上げたお兄さんが呟いた。
「すみません、遅くなってしまって」
「いいよ。送っていくから」
「いえ、そこまでしてもらうのは」
「遠慮しないで。さすがにこの雨だと歩いて帰るのきついから。しかもあの荷物の量で」
その言葉に、スーツケースの存在を思い出す。
「ホテルは取ってあるの?それとも妹の部屋に送ろうか?」
「あ、えっと」
「さすがに俺の部屋には泊められないからね」
「当たり前です!!」
慌てて答えると、お兄さんがケラケラ笑った。
こういうところも真奈美っぽい。
「芽衣子ちゃんが動きやすい場所まで送るよ」