花に美少年

部屋探しに夢中で、今日泊まるホテルを確保するのをすっかり忘れていた。明日も仕事だから、出来れば通勤しやすい場所がいいけど。

「あ、」

「ん?」

充電器・・・。

「あの、」

「何?どうしたの?」

「泊めてあげた人の忘れ物が家にあったら、やっぱり困りますか?」

「え?」

「しかもその人と連絡が取れなかったら、捨てるのにも困るのかなって」

そんなことをお兄さんに聞いても仕方ないのに、他に聞く相手がいないから聞いてみた。

「まあ、勝手に処分するのは気が引けるよね」

「・・・ですよね」

自分がその立場でもそうだと思う。
ましてや充電器なんて、捨てるに捨てられない。
困り果てて、いつまでも部屋の片隅にあることになるだろう。

「すみません・・・寄りたい所があって、そこまで送ってもらってもいいですか?」

頭を下げた私に、お兄さんは快く承諾してくれた。
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