花に美少年

「あ、あの、」

「ごめん、待たせた?」

「え、」

「寒かったよね?」

戸惑う私に、結児君は慌てて傘を閉じると、すぐに目の前まで駆け寄って、そんな優しいことを言ってくれる。
それから部屋の鍵を取り出すと、当たり前のように私を中へ招こうとした。

「待って、結児君!」

「ん?」

このまま中に入るわけにはいかない。

「あの、私忘れ物をして」

「忘れ物?」

「うん。それを取りに来ただけなの。だから、すぐに帰るつもりで」

重なった視線が、射貫くように私を見る。

「忘れ物って、何?」

「あ、えっと、充電器」

「・・・ロフトの上かな?」

「そ、そうかも」

「わかった。すぐに取ってくるから、せめて玄関で待ってて。外は寒いでしょう?」

あまりにもあっさりと部屋の中へ入って行った結児君に、拍子抜けした気分だった。もっと色々なことを追及されると思っていた。
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