花に美少年
わけがわからず振り返ろうとした身体は、背後から伸びてきた彼の両腕に閉じ込められて、身動きが取れなくなる。背中に触れた熱に、心臓が止まりそうになる。
無防備な耳朶を、その呼吸が擽る。
怖いほどに、ドキドキしている。
「結児君、私、帰らないと」
「さっきの男、誰?」
いつもよりも低くい声。だけどいつもの強引さはなく、まるで泣きそうなほど弱気な声。
「さっきのって、」
「本当はめいちゃんが車から降りてくるところから見ていたんだ。でも怖くて、声掛けられなかった」
「怖いって」
「今はすごく、イラついてる」
「結児君」
「でもそういうこと聞いたら、うざいと思われるだろうから我慢するつもりだったんだけど、」
首元に顔を埋めた男の息が、私の肌に触れる。
「やっぱ、無理。余裕ぶったり、大人ぶったりしたいのに、全然出来ない」
何これ?なんなの、これ?
「めいちゃん、昨日あの男の部屋に居たとか言わないよね?」
もしかして、私の心臓壊れてる?