花に美少年

「・・・」

静まり返る部屋に、時計の針だけが音を立てる。
まるで息が止まったような沈黙に、私の唇は冷たいままで、描いていた1分後の未来が訪れないことに疑問に思い瞼をゆっくり開けた。

「・・・は?」

困惑しながら目を開けた私の前には、やっぱり結児君が居た。その瞳に、真っ直ぐに私が映る。
そして私の目にも、結児君だけが映る。
数分前、余裕そうな顔で生意気な色気を垂れ流しながら私に近づいた男。
なのに今、私の目に映るのは、漫画みたいに真っ赤な顔をした結児君だった。

「結児君?」

重なった視線から逃げるように、結児君が顔を背ける。

「めいちゃんってなんなの?」

「なんなのって、それはこっちのセリフで」

「あんな顔見せられたら、ちゅーなんて出来ないよ」

「はい?」

「だいたい何でちゅーしようとしてるんだよ?バカじゃない?」

「バカって」

「ああ、もう」

項垂れるように結児君がしゃがみ込む。

「ねえ、意味わかんないんだけど」

自分がしようとしたくせに。

「めいちゃんは、鈍いくせにずるい」
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