花に美少年
夜、仕事を終えた私は急いでスーパーに向かった。
職場を出て電車に揺られている間もずっと、何を作ろうか考えていた。
待ちに待った給料を、朝一番で降ろしたから、少しは贅沢が出来る。この1週間、お世話になったお礼の気持ちもあるのだから、ちゃんとした物を作りたいし、何より結児君に喜んでもらたい。
たいして美味しいわけでもない私の料理を、結児君が美味しいと言って食べてくれたから、粉々だったプライドが、少しだけ救われた気がした。
正直、彼への気持ちが本当に恋なのかはわからない。
好きだと思うけど、まだそこに踏み出す勇気がない。
でも一緒に居るのが嫌ではないのも事実で、この胸のモヤモヤが結児君のせいなのも確かだ。
それにしても、連絡先、聞いておけばよかった。
辿り着いたスーパーで、人参以外に苦手な物があるのか気になったけど、連絡を取る手段もない。
「どうしよう」
やっぱり男の子はお肉かな。
肉じゃがなら作れるかも。
でも肉じゃがって狙い過ぎ?
そもそも若い子って肉じゃがとか食べるのかな?
おばさんっぽいとか思われたらどうしよう・・・。