花に美少年
1day
「・・・え?ごめん、何?」
あまりに理解不能な現状に、今日この日がそもそも夢なんじゃないかとすら思えてくる。
だから鏡を見なくても、自分がどれだけマヌケな顔で目の前の男を見上げているかも想像出来る。でも仕方ない。他にどんな顔をすれば良いのかって話だ。
そんなマヌケ面の私とは反対に、男はある意味マヌケなくらい柔らかな笑みを浮かべて私を見下ろしていた。
「こんな時間にお引越しってこともないでしょ?」
「は?」
「だから、これお姉さんの荷物なんだよね?」
「そうですけど」
「行く所がなくて、困ってるのかなと思って」
「・・・えっと」
まさにその通り過ぎて、返事も出来なかった。
と言うか、口にしないだけで、この男は私が追い出されたことまでも感づいているのかもしれない。そう考えると余計に返事が出来なかった。
情けなさ過ぎて、悔しくて、頷くこともしたくなかった。
「俺、すぐそこのアパートで一人暮らししているんです」
うんともすんとも言わない私を置いて、男は口元を緩めて勝手に話を始めた。
「広くはないけれど、2部屋あります」