花に美少年
「・・・そう、なんだ」
いつもは冴えていない勘が、こんな時にばかり働く。
「そうしたら、あいちゃんが泊まるとか言い出して、ちょっと焦ったけどね」
まだこんな時間なのに、結児君から石鹸の香りがする。
「まさかめいちゃんに会わせるわけにもいかないし、急いで帰らせたんだ」
いつもは綺麗なベッドのシーツが乱れて見える。
「その子、よく来るの?」
「うーん、結構来てるかも」
「・・・仲良いんだね」
口にした言葉には、棘があるかもしれない。
「うん。俺はそのつもり」
だけど結児君はいつも通りの優しい声で答える。
棘があるのは、結児君の方だ。
「もしかして、洗面所の歯ブラシもその“あいちゃん”のだった?」
「そうそう。いつ来てもいいように置いてある」
甘い声が、急に悪魔のように思えた。
「結児君、彼女いないって言ったよね?」
「いないけど、もうすぐ出来るかも」
「え?」
その言葉に、漸く結児君の顔を見た。
少し目尻の下がった、甘くて優しい顔。