花に美少年

「めいちゃん」

キッチンに行こうと立ち上がると、スカートの裾が引っ張られて、仕方なく振り返る。

「・・・何?」

「俺のこと、好き?」

やっぱり辛そうな結児君が、だけど嬉しそうに目を細めて私を見る。ずるい。そういうの本当にずるいよ。

「めいちゃん?」

「・・・好きだから」

「ん?」

「結児君のこと好きだからここに居るんでしょう!」

もう何度も何度も狂わされている。
壊されそうになっている。
その声にも、その視線にも、その熱にも。

「そっか」

こっちが恥ずかしくなるくらいに幸せそうな笑みを零した結児君は、掴んでいたスカートの裾から手を離すと、今度こそ素直にベッドの上で寝転んだ。

「これでも私、結児君のことを心配しているの」

「うん」

「だから、早く元気になって」

せっかく気持ちが通じ合えたのだから、なんて言葉は続けられないまま、逃げるようにキッチンへ向かった私の耳に、「ありがとう」と甘い声が届いた。
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