花に美少年
「まあ、好きって自覚したのは少し経ってからだけど」
「え、だって、え?」
「めいちゃんは覚えてもいないだろうけど、喋ったことだってある」
「私と!?」
「・・・」
「・・・ご、ごめん。全く覚えてない」
正直に答えた私に、結児君は肩を落としたように溜息を吐いた。
「めいちゃんさ、仕事に行くときによく、すれ違う人すれ違う人に挨拶しているでしょう?」
「へ?ああ、うん」
それは子供の頃からの習慣だ。
近所の人に会ったら挨拶をすること。
「それで俺にも何回か挨拶してきた」
「私が結児君に?」
「そう。だからめいちゃんのことはすぐに覚えた。今時こんな都会にそんな人いないから」
「いや、えっと、私の実家結構田舎で・・・」
なんだか恥ずかしくて、また視線を逸らす。
「新鮮だった」
「へ?」
「誰かに朝から笑顔で挨拶されるって、いいなって」
胸の奥がきゅんとした。言葉が、真っ直ぐ過ぎた。