花に美少年
「彼氏がいても、相手にされなくても、この人が好きだって思った」
「結児君」
「だからそれからはずっと、めいちゃんに話しかける機会を待っていた。ストーカーみたいにね」
「ストーカーって」
「冗談じゃなくてわりと本気。めいちゃんに会えるのは何曜日か真剣に推理したり、どっち方面の電車乗るのかホームでチェックしたりして、自分でも引くくらい」
「そんなの全然気づかなかった」
「引いた?」
「ううん」
すぐに首を振ったのは、その気持ちが理解出来たから。
私だって何度も片想いをしたことがある。
先輩の授業の時間割を調べたり、好きな男の子と偶然を装って休みの日に会ってみたり・・・たぶんみんな経験する、甘酸っぱい記憶。
「だからあのアパートの前を通る時はいつも緊張していた。めいちゃんに会えるかもって・・・でもそうしたらある日、あの男が段ボールを運び出しているのを見たんだ」
「・・・え、それって」
話は漸く、あの最悪な夜に繋がっていく。
「うん。それから数日めいちゃんを見かけなくて」
たぶん私が研修に出掛けていた期間。