花に美少年

あの夜に私の物語が大きく動いたように、きっと結児君の物語もずっと、知らないところで動き続けていた。

「単純な発想だけど、傷ついているめいちゃんに優しくして優しくして、俺のものにしようって考えた。その為に、あの夜は強引にでも俺の部屋に連れ込もうって思った」

だけど実際は全然強引じゃなかった。
重たい段ボールを持ってくれて、ボロボロの私に温かいコーヒーを淹れてくれた。

「結児君の作戦は、成功だね」

その甘くて優しい手に、私はまんまと落ちた。

「失敗しかけたけどね」

「え?」

「本気でもう会えないかと思った」

「結児君」

まだ熱を残す手が、私の頬に触れる。

「だから今日病院でめいちゃんを見つけたとき、あまりの会いたさに、全てのナースがめいちゃんに見える病気なんじゃないかって不安にもなった」

「・・・うん。そんな病気はないから」

「でも本物だった」

「私も・・・もう会えないと思ってた」

嫌われたまま、忘れられていくのかと思ったら怖かった。

「めいちゃんが俺を知らなくても、俺はめいちゃんを知っている」

その甘さはいつか私を滅ぼすかもしれない。
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