花に美少年

「付き合いだしたことは報告したけど、それも職場でだからゆっくりは聞いてもらえてなかったの。だから今日はとことん惚気る予定」

「惚気るって、俺とのことを?」

「うん。だって本当に最悪な恋ばかりだったんだよ?だからね、たまには鬱陶しいって思われるくらい惚気たい」

めいちゃんはずるい。
会う時はいつも素直じゃないくせに、こんな電話越しに可愛いことを言うなんて、抱き締められないじゃないか。

「たまにじゃなくて、これからはずっと惚気られるよ」

「そうだと嬉しいな」

本気で言ったのに、めいちゃんは冗談を聞くように笑う。
ああ、やっぱり、今すぐ会いたい。

「めいちゃん」

「ん?」

「土曜日は朝から会おうね」

「わかってるよ。結児君のアパートで待ち合わせでしょう?どこ行こうね」

「めいちゃんが居てくれたらなんでもいい」

「はいはい。あ、もうそろそろ真奈美迎えに行くから」

「めいちゃん!」

電話を切ろうとする愛しい人を、一秒でも繋ぎとめたいと思うのは、俺がまだ子供だからだろうか。

「どうしたの?」
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