花に美少年
「あれ?中に入ってて良かったのに」
自分の部屋の鍵を開けて、私を玄関に入れるなりまた外へと出て行った男は、残り二つの段ボールも運んで来てくれた。
「勝手に入れないよ」
だから見ず知らずの他人の家の玄関で、私はすることもなく立ち尽くしていた。
途中でやっぱり危険なんじゃないかとも思ったけれど、一度室内に入ると外の寒さが際立って、結局男が戻って来るまで玄関で待ってしまった。
「段ボール、とりあえず積んどいていい?」
「うん。邪魔にならない所に置いてくれればいいから」
この男に下心があったとしても、さすがに段ボール5つを置いてもらうのには申し訳ない気持ちになる。
「狭いけど、適当に使ってください」
男はそう言いながら、玄関を上がってすぐにある扉の中に入っていく。たぶん扉の奥がキッチンやリビングなのだろう。
左手を見ると、気持ちばかりの廊下の先に洗面所が見えた。きっと奥にお風呂がある。すぐ脇には扉がもう一つあるから、たぶんこっちがトイレだろう。
なんとなく間取りを確認しながら男の入っていった扉の中に入ると、カウンター様式になっている小さなキッチンスペースと13畳ほどのフローリングが広がっていた。