花に美少年
笑うたびに、甘く緩む目尻が女の子みたいに可愛い。
そんな彼の名前を聞いてしまった以上、自分も名乗るのが道理なんじゃないかと思う。
だけど初対面の相手に、しかもこの状況で名乗って良いものかも悩む。
「おねーさん、」
「・・・」
「お姉さん」
「・・・へ?え?何?」
「眉間に皺寄ってる」
「ええっ」
慌てて額を隠すと笑われた。
「聞かないから、安心してください」
「え?」
「お姉さんの名前も職業も、生年月日も聞きません」
砂糖を入れていないコーヒーを飲みながら、湊結児くんが私を見る。
「お姉さんが凍死しないように、救助しただけです」
「・・・」
「だから安心してください」
その目は真っ直ぐで、嘘を吐いているようには見えなかった。
「本当に、一晩泊めてくれるの?」
「はい。行く所がないなら、暫く居ても構いません」