花に美少年
スッピンと大して変わらないような、社会人としてのマナー程度の化粧で過ごす毎日だ。
可愛いネイルなんて出来ないし、髪の毛だって落ち着いた茶色が精一杯。
その上、休憩中だって気を抜けないから常に肩は凝るし、週に一度は夜勤があるから生活のリズムは不規則。
夜勤明けにそのままエステに行くと、担当のお姉さんと挨拶を交わした次の瞬間には爆睡してしまう。
"天使"なんて言えないくらいのストレスも溜まるし、真奈美と飲みに行った時の会話の大半は患者さんやドクターの愚痴だ。

憧れられる要素なんてない。
なるまでもなってからも過酷な毎日だ。

とは言って仕事が嫌いなわけじゃない。
たまにイラっとするけれど、やっぱり患者さんの笑顔や言葉に救われるし、いつだってドクターは頼りになる。
嫌だったら続けられない仕事だし、好きで誇りを持っていないと誰も救えない。看護師になると決めた日から、今もずっとこの仕事を尊敬している。

専門学校時代の必死だった自分を思い出して、昨日の自分を反省した。
最低な失恋をしたとしても、ちゃんと生きないと。

「・・・あ、」

そこまで振り返って、思い出した。
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