花に美少年

慌てて残りの段ボールを開けるけれど、中身は全部見覚えのある鞄や靴。仕事の資料に友達との思い出のアルバム。
海外に行ったときに買ってきた、よくわからない置物やお気に入りの雑貨たち。
全部、全部、私の物。

「・・・は?」

2月の空は当たり前のように寒くて、18時を過ぎれば辺りはもう暗い。
そんな日に福岡での研修を終えて疲れ切った私は、本来なら今頃家に帰って、暖かい炬燵に潜り込んで、研修の疲れを癒すために彼氏に甘えまくっているはずだ。
なのに、何かがおかしい。
何かが、とてつもなくおかしい。
5日分の着替えや、研修の資料が詰まったスーツケースを掴むと、私は急いで二階に続く階段を上りはじめた。
だって、おかしい。
急な引っ越しなんて聞いてもいないし、何より二階にあるその部屋の窓からは、私が帰るべき灯りが漏れているのだから。
これっていったい、何の冗談!?


ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン!!!!

自分でもありえないくらいの勢いで押したチャイムから間もなくして、203号室の扉は開いた。
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