花に美少年
「ああ、今病院に検診に行ってるから」
「そっか・・・」
自分で聞いて、聞きたくないと思った。
曖昧に笑う私を、鉄平は昨日と同じ面倒臭そうな顔で見た。
「あのね、私も別に邪魔しようとか文句言おうとか思って呼び出したわけじゃないから!」
「・・・」
「昨日はやっぱりショックだったけれど、ちゃんと冷静に考えて、鉄平と彼女と赤ちゃんが幸せになるのが一番だって思った」
どうして人間ってこんな時まで、良い人ぶろうとするのだろう。
「だから、もう会うつもりもないし連絡もしない」
「・・・わかった」
「うん。それで、同棲解消するわけだからさ、ちゃんとしておきたいと思って」
「何が?」
「つまり、お金のことなんだけどね」
「・・・金?」
それまでどこか遠くを見ていた鉄平が、私に視線を向けた。
「あの、ほら、冬のボーナスの時に鉄平にお金渡したでしょ?生活費の貯金と言うか」
「ああ、」
「それね、残っている分は返して欲しいの」